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1,500人の指導実績から生まれた“3ヶ月メソッド”――体験と共感をつなぐ学びの場の未来

学習支援 / コミュニティ

この事例のまとめ

課題
課題
  • Slackなど既存のツールでは情報が分散し、参加者が必要な教材や情報を見つけづらかった
  • 動画教材を蓄積すると容量制限にすぐ到達し、運営コストが増大する課題があった
  • 参加者の年齢層が幅広く、高齢層にとっては操作が難しいケースもあり、継続率に不安があった
効果
効果
  • FANTS導入により動画を無制限に蓄積でき、安心して教材提供が可能に
  • ホーム画面を活用した「カルーセル表示」や「サイトマップ設計」で、迷わずに教材へアクセスできるようになった
  • 通知機能によりイベントや教材追加の見落としが減少

外国ルーツの子どもたちに日本語を教えてきたPlus Educateは、3ヶ月で日常会話を身につける独自メソッドを確立し、累計1,500名を指導してきました。2024年には日本語教師や教育関係者に向けたオンラインサロンを立ち上げ、教材・相談・練習会を組み合わせた「継続的に学び続けられる仕組み」を提供しています。

小島 恭子
NPO法人プラス・エデュケート 理事 小島 恭子

2009年に外国ルーツの子ども支援を開始し、2012年に法人化。以来、学校や家庭と連携しながら日本語教育と居場所づくりを推進している。

愛知県を拠点に外国にルーツを持つ子どもへの日本語教育支援を行うNPO法人プラスエディケイト。理事長・森氏が2009年に一人で始めた学習支援は、2012年の法人化を経て累計1,500名超の子どもたちを指導。「3ヶ月で日常会話まで到達させる」実践メソッドを磨き続けてきました。

2024年10月には、指導ノウハウを『関係』と『体験』の中で学び合うオンラインコミュニティを開設。開始から50〜60名規模へと成長し、継続率も高い運営が続いています。今回は、コミュニティ立ち上げの背景や運営設計、今後の展望を伺いました。

現場から生まれた『3ヶ月メソッド』「早くクラスに戻してあげたい」

ーーオンラインコミュニティ以前の活動について教えてください。

小島さん:はい、活動についてですが、2009年に理事長の森が一人で学習支援を始めたのが出発点です。活動当初、外国にルーツを持つ子どもたちは「勉強についていけない=能力がない」と誤解されがちでした。けれど実際に向き合ってみると、原因は子どもの力不足ではなく、『日本語の初期支援が不足している』ことがボトルネックだったんです。

この課題を解決するため、2012年には法人化を行い、活動を日本語の初期指導に特化しました。以降は学校や家庭と連携しながら指導を続け、これまでに約1,500人の子どもたちをサポートしてきました。

元々これらの分野は実践例がなかったのもり、自分たちで教材を開発したり『3ヶ月で日本語が話せるようになるメソッド』を作ったりなど、現場で培ってきたノウハウが、今の活動の基盤になっています。そして、3ヶ月で話せるメソッドが徐々に認知を集め『どうしたらうまく教育ができるのか』とお問い合わせいただけるようになってコミュニティの開設に繋がりました。

ーー3ヶ月メソッドの「3ヶ月」という期間を設定した理由はなんだったのでしょうか?

小島さん:そうですね、『3ヶ月』にしたのは、何よりも子どもたちを一日でも早くクラスに戻してあげたいと考えたからです。

日本語を全く話せないまま学校に通うと、友だちとのやり取りも難しく孤立しやすい。だからまずは「友だちと会話ができる」「授業に参加できる」という状態を短期間でつくることを重視しました。

1年かけてじっくり取り組む方法もありますが、それでは長すぎて子どもたちの成長や学校生活に支障が出てしまいます。試行錯誤を重ねた結果、日常会話レベルに『3ヶ月で到達できるカリキュラム』を確立しました。

今では出席率や継続率も高く、学校や家庭と連携することで効果的に支援できる仕組みになっています。

ーー授業の出席率や継続率はどのくらいなのですか?

小島さん:ほとんどの子どもたちが休まず通ってくれています。もし欠席があっても振替やフォローを入れるようにしているので、継続率はとても高いですね。やめてしまう子はほとんどいません。学校や家庭とも密に連携しながら、続けやすい環境を整えていることが大きいと思います。

保護者の方とのつながりも大切にしています。英語圏以外の方も多いので、必要に応じて母語の通訳さんに入っていただいたり、家庭と小まめに連絡を取り合ったりしています。子どもと家庭の両方を支援することが、結果として学びの継続につながっています。

授業の形式については、実はオフラインがメインです。目の前で子どもたちとやり取りするほうが成果も出やすいですからね。ただ、地域に支援拠点がない子や、過年齢で日本に来た子たちなど、オフラインに通えないケースもあります。そういった子どもたちにはオンラインで対応し、できるだけ多くの子を支えられるようにしています。

「知識を技術に変える場」をつくる――セミナーからコミュニティへ

ーーオンラインコミュニティ立ち上げの背景を教えてください。

小島さん:はい、背景についてですが、これまで私たちはセミナーで指導メソッドを伝えてきました。その場では参加者の方が「できそうだ」と実感を持ってくださるのですが、現場に戻るとどうしても実践に結びつかず、うまくいかないケースが多かったんです。

私自身も同じ経験をしてきました。現場で失敗を繰り返し、そのたびにフィードバックを受けながら少しずつ成長してきたんです。だからこそ、単に知識を渡すだけで終わらせず、「知識を実際の技術に変える」ための、双方向で継続的な学びの場が必要だと強く感じました。その思いが、オンラインコミュニティという形を選ぶきっかけになりました。

ーーオンラインスクールではなく、オンラインサロンを選んだ決め手はありますか?

小島さん:以前には「教育道場」として8〜10回シリーズの講座を実施したこともあります。一定の成果はありましたが、終了してしまうとサポートを継続するのが難しく、受講後の実践支援に限界を感じていました。

その点、オンラインサロンであれば、

  1. 教材の提供
  2. リアルタイムでの更新・発信
  3. 参加者同士の相互コミュニケーション

 という三つの軸を同時に回すことができます。これなら継続的な支援が可能になり、個別の課題解決にも柔軟に対応できる。そう判断して、サロンという形態を選びました。

ーーありがとうございます。確かにオンラインスクールは教材が中心で一方向ですが、オンラインサロンは「発信者+教材」に加え、リアルタイム性双方向性があります。学ぶだけでなく交流しながら成長できるのが大きな違いですね。

FANTSを選んだ理由とは「動画容量の制限なし」と「ホーム画面の設計力」

ーー様々なプラットフォームの中で、FANTSを選んだ理由を教えてください。

小島さん:はい、FANTSを選んだ理由は大きく二つあります。まず、e-learning型のサービスでは動画容量やトラフィックに応じて従量課金になることが多く、どうしてもランニングコストが高くなりがちです。

その点、FANTSなら動画容量の制限を気にせずに使えるので、安心してコンテンツを提供し続けることができます。

さらに大きな決め手となったのが、ホーム画面のカルーセル機能です。ここに「サイトマップ」「月間予定」「初めての方へ」「自己紹介」などをまとめることで、利用者が迷わずに必要な場所へアクセスできる導線を設計できました。

参加者のペルソナは平均48歳前後と比較的年齢層が高いため、この『迷わない設計』はとても重要でした。加えて、アプリ通知があることで見落としも減り、参加者とのやり取りがスムーズに進むようになっています。

ーーFANTSを導入して、以前のSlack運用とはどんな違いがありましたか?

小島さん:そうですね、Slackは交流の場としては十分に機能していましたが、課題はコンテンツの整理やアーカイブの見やすさでした。教材や動画を「あとから見返したい」と思っても探しにくく、情報が流れてしまうんです。

その点、FANTSは部屋ごとにコンテンツを整理でき、必要なときにすぐにアクセスできる。コミュニティ運営では「いつでも見られる教材」と「整理された部屋」が不可欠ですが、FANTSはまさに『学びの動線を設計しやすいプラットフォーム』だと感じています。

週1のリズムで『継続』を設計――ログイン率を高める運営術

ーー継続のための運営設計を教えてください。

小島さん:はい、継続設計についてですが、基本の柱は「飽きさせないこと」です。そのために、前月のうちに月間スケジュールを参加者へ配信し、週1回のイベントを固定化しています。具体的には以下の流れで進めています。

  • 第1週:教材の提供
  • 第2週:教材の解説+プチセミナー+相談会
  • 第3週:翌週に予定している『教え方練習会』の告知
  • 第4週:教え方練習会(実践の場)

このように月ごとにリズムを設けることで、参加者が先の予定をイメージしやすく、無理なく学びを継続できるように工夫しています。

ログイン率を上げる工夫はありますか?

小島さん:そうですね、まずはホーム画面のカルーセルを活用して「最初に見るべき場所」を明確にするようにしています。例えば、『入会したらまずこちら』というオンボーディング導線を設置し、迷わず学びを始められるようにしています。

また、通知のタイミングも重要です。参加者の生活リズムに合わせて配信時間を工夫することで、ログインの習慣化につながっています。結果として、自然に「見に行きたくなる」仕組みができていると感じています。

多様な参加者と継続学習を支える“ハイブリッド型コミュニティ運営”

ーー参加者の方はどんな属性ですか?

小島さん:はい、参加者についてですが、学校教員や大学教員の方から、地域で活動するボランティア、NPO職員まで本当に多様です。現状は「難しすぎて脱落しない」ように、やや緩めの設計で運営しています。ただ、将来的にはプロ志向の方に向けた特訓クラスのような段階別コンテンツを用意したいと考えています。さらに、独自の認定(検定制度)を導入し、スキルの到達度を可視化する仕組みを整える構想もあります。

ーーなるほど。そういった運用を実現するための計画や工夫などはありますでしょうか?

小島さん:そうですね、まず立ち上げてから半年ほど経って、参加者のスキルや求めていることがだんだん見えてきたところです。最初の半年間は「どんな方が集まっているのか」を探る期間でした。

その上で、今は年間スケジュールの整備を進めています。1年間の中でどう成長していけるのかをあらかじめ提示し、その道筋を1ヶ月ごとの学びやイベントに落とし込んでいく。例えば月ごとにテーマを設けたり、習慣化できるリズムを作ったりすることで、参加者の方が継続的に『飽きずに』取り組みやすいように工夫しています。

これまでの半年で得られた知見をもとに、ようやく年間単位での設計ができる段階に入った、というのが今の状況ですね。

ーーありがとうございます。運用上の課題や要望はありますか?

小島さん:そうですね、一つは参加者に高齢の方も多いことです。タブレット(iPadやAndroid)対応のニーズが強く、ブラウザ経由だと使いにくさから諦めてしまう方も見受けられます。そのため、アプリ自体がタブレットに最適化されると非常に助かります。

また、もう一つは運営側の課題です。管理者がコミュニティ内のすべてのコメント通知を受け取れる設定があると、見落としが減り、運営がよりスムーズになります。細かな機能改善が積み重なれば、参加者にもさらに安心して利用いただける場になると思います。

目標は「来年度100名」――長期は『7万人問題』を解く教師づくりへ

ーー今後の目標を教えてください。

小島さん:はい、直近の目標は来年度中に参加者を100名規模にまで増やすことです。立ち上げから半年が経ち、ようやく継続率や参加者像も見えてきましたので、まずは安定した基盤づくりを大切にしています。

そのうえで、長期的な視点ではさらに大きな課題に向き合いたいと考えています。現在、日本国内にはおよそ7万人の外国ルーツの子どもたちがいると言われています。そうした子どもたちを継続的に支援できる教師を育てていくことが、私たちの使命だと思っています。

最終的には、1,000〜5,000名規模のコミュニティへと拡張し、段階別の認定制度を整備することで学習のモチベーションを高めたい。そして、現場で即戦力となる人材を継続的に育成していきたいと考えています。

まとめ|『関係と体験が続く場所』が、現場の力を底上げする

プラスエディケイトは、現場で磨いた「3ヶ月メソッド」を、セミナーの『一方向』からコミュニティという『相互学習』へと拡張しました。
高齢層にも配慮したホーム画面設計、週1のリズムで回す月間スケジュール、質問と実践を往復させる練習会。そこには、情報を配るだけでは育たない『現場の技術』を、関係と体験の継続で定着させるという確かな哲学があります。

やがて段階別コンテンツや認定制度が整えば、学びは『個人の成長実感』へ、そして『子どもたちの学ぶ権利を守る社会的力』へと広がっていくはず。応援の熱が続く場所こそ、次の教育を動かします。

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外国ルーツの子どもたちを支援する教師・教育関係者向けのオンラインサロン。教材配布、プチセミナー、教え方練習会などを通じて「知識を技術に変える場」を提供。将来的には独自認定制度を導入し、段階的に学べる仕組みを提供。

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