《後編》500名を超える支援を集めた水族館が語る、オンラインサロン運用のコツ

 

こちらの記事は、南知多ビーチランドさんへのインタビュー 《前編》”ふれあい日本一”を掲げる水族館が、オンラインサロンを始めた理由 の続きです。

 

後編となる今回も、所長の平松大介さんにお話を伺いました。オンラインサロン『ビーサポ』開設後に感じたことや、運用におけるコツ・工夫、これからについてご紹介します。

 

[ 聞き手:森山裕平(FANTS事業部長)]

 

開設してみて感じたこと

意外なコンテンツが人気を博す

森山:

『ビーサポ』の中身や内容としては、具体的にどんなコンテンツを運用していますか?

 

 

平松さん:

一番多く投稿されているコンテンツは「日常のつぶやき」といって、いきものたちの普段の様子、何気ない姿を載せているものですね。飼育員などのスタッフが投稿しています。

 

他にも「イルカのプール」「新人獣医の奮闘日記」など、それぞれのスタッフが自分の目線、自分の言葉でビーチランドや業務について発信しています。

 

 

森山:

平松さん自身も「所長のコラム」というコンテンツで、所長として自ら様々なメッセージや想いを発信していますよね。

 

 

平松さん:

そうですね。なるべく堅苦しくならないよう気楽に読んでもらえるような雰囲気で、所長目線のビーチランドの情報をお届けしています。

 

他にも、あるペンギン担当のスタッフの専用コンテンツでは毎回長尺の動画が上がっていたり、自ら編集した動画を上げていたりと工夫してくれていますね。社内で「ちょっと長すぎない?」とか「そんな裏側まで見せて大丈夫?」という声もあったんですけど、一方でコアなペンギン好きの会員さんたちはものすごく楽しみにしてくださっていたり。

 

 

森山:

ペンギンの色々な姿を捉えた目玉コンテンツだと思うんですけど、社内ではそんな声もあったんですね!

 

 

平松さん:

そういうのが人気なんだ、と意外でした。コンテンツの人気度合いとか盛り上がりは「いいね」やコメントの数で分かるので、そういう数値はよく見ています。

 

 

スタッフから「公式SNSよりも気軽だ」という声も

森山:

準備段階で心配されていたプロジェクトメンバーへの負担ですが、実際始まってみてどうですか?

 

 

平松さん:

業務負担の部分については、結果的に不安は解消されているんじゃないかなと思います。

 

ビーチランドでは公式SNSも同時にやっているんですけど、FANTSは応援してくださる方限定の空間ですし、ありのままの日常をお伝えすればいいので、情報の加工や精査があまり必要ないんですよね。そこに神経を使わなくていいというか。

 

 

森山:

不特定多数の人が見ている公式SNSの方が、むしろ情報の扱いだったり、内容や表現を気にかけないといけない面はありますよね。

 

 

平松さん:

そうなんですよ。運営メンバーからもFANTSの方が気軽だという声も多くて、これに関しては不安は解消されてるのかなと思います。

 

 

 

会員からの温かいコメントが、ビーサポを続ける原動力

森山:

ビーサポを見ていると、会員の方は本当にビーチランドさんのことが大好きで、心から応援してくれているんだなというのが伝わってきます。

 

 

平松さん:

開設して会員さんが増えるほど、リアクションが目に見えて分かるようになったり、コメントがたくさんついたりして、応援してくださるのが伝わってくるので嬉しいですね。

 

やっぱり会員さんから直接反応がもらえるというのは、スタッフにとってもすごく励みになっています。「あの会員さんからこんなコメント付いてたね!」と、よくスタッフ同士で話してたり。

 

 

森山:

実際にいきものを担当しているスタッフさんと直接 ”ふれあい” ができるということで、会員の方からのコメントもたくさんついてますよね。

 

 

平松さん:

スタッフの投稿へのリアクションだったりとか、温かいコメントが非常に多いんですよ。一つ一つのコメントが、私たちが『ビーサポ』を続ける原動力になっていますし、なるべくコメントを返していこうという話もしてます。

 

 

森山:

平松さんも含め、スタッフの皆さん自らコメントに返信したり、コメントにリアクションを付けたり、会員の方としても嬉しいだろうなと思います。

 

 

平松さん:

私たちスタッフとビーサポ会員さんは、基本的にフラットな関係だと思っていて。ある意味私たちの仲間という認識で、だから「ビーサポさん」とか「ビーサポファミリーの皆さん」と親しみを込めて呼んでたりもします。

 

 

森山:

スタッフの皆さんがそういう姿勢だからこそ、会員の方々も気軽にコミュニケーションがとれて、良い循環ができてるんじゃないかなと感じます。ご支援の人数も、先日ついに500名を超えましたね。

 

 

平松さん:

こんなに多くの方にご支援いただけるとは思わなかったですし、退会される方も思ったよりかなり少なくて、正直驚きましたね。しかも、オンラインサロンの中で応援してくださるだけでなく、SNSで「#ビーサポ」とハッシュタグをつけて紹介してくださったりとか。そういうお手伝いのおかげもあって、少しずつ認知していただいて支援の輪が広がっているのかなと思います。

 

 

 

オンラインだからこその可能性が広がっている

平松さん:

もともとご出身が愛知県で、お仕事などで今は遠方に住んでいる会員さんもいらっしゃるんですよ。そういった方が会員になって応援してくれるのも、嬉しいですね。

 

 

森山:

これまで応援したくてもできなかった方も、『ビーサポ』なら遠方から支援できますし、ビーチランドさんとしても今まで以上にたくさんの方に魅力を伝えていけますよね。

 

 

平松さん:

実際に来場してくださるのはやっぱり愛知県からの方が一番多くて、それに続いて近くの県からの方という感じなんですけど、オンラインサロンなら会員さんがどこに住んでいたとしても繋がることができるじゃないですか。それはいいですよね。

 

あとはスタッフも出身地がそれぞれなので、ご家族が会員になってくれるケースもあります。特に今はコロナで移動の制約が大きくて、遠方の方はご遠慮くださいという雰囲気もあって・・・。ご家族が仕事ぶりや活躍をオンライン上で見れるのも良いなと、やってみて気付きました。

 

 

 

『ビーサポ』運営のコツ・工夫

ビーチランドらしさを、オンラインでも感じてもらえるように

森山:

オンラインサロンの開設については「ちゃんと運営できるか不安だ」という声もよく聞くので、ぜひ運用のコツなどもお聞きしたいのですが、どうですか?

 

 

平松さん:

オンラインサロンって色々なタイプがあると思うんですけど、ビーチランドはオンラインでもオフラインでも同じ空気感というか、同じような居心地の良さを作り出すのが大事だと思っていて。

 

「なんとなく居心地がいいな」とか、「なんか温かみがあるな」とか、そういうところが出せていて、応援してくださっている方に響いてるのかなと思ってます。

 

 

森山:

具体的に、どんな部分にビーチランドらしさが出てると思いますか?

 

 

平松さん:

もちろん、ショーやイベントで直接伝わる良さもあるとは思うんですけど、オンラインはコメントでのやりとりなどを通して、スタッフと会員さん、あるいは会員さん同士の良い繋がりができていると思います。

 

そういった繋がりが居心地の良さや温かみとなって、オンラインでもビーチランドの魅力を感じてもらえてるのかなと。

 

 

 

いきものだけでなく、スタッフの人柄も魅力に

平松さん:

居心地がいいとか温かいとか、そういうビーチランドの良さを出していこうと思うと、やっぱり私たちからの情報発信を通じて会員さんとのコミュニケーションに取り組んでいくのが一番大事になってくるのかなとも考えています。

 

 

森山:

コミュニケーションという点では、何がポイントだと思いますか?

 

 

平松さん:

プロジェクトメンバーの人選はキーポイントだと思います。『ビーサポ』では、実際にタイムラインに投稿が並んだときをイメージして、スタッフの個性とか、全体のバランスを考えてメンバーを決めました。

 

ビーチランドのスタッフには個性的というか、尖ったメンバーもいるなと思ってるんですけど、それをうまく生かせればと思って。

 

 

森山:

実際見ていて、投稿がそれぞれの目線で発信されているので、内容がとても充実しているなぁと感じます。あと、スタッフの皆さんでいきものに関するゲームをするとか、スタッフさんが主役の投稿も人気ですよね。

 

 

平松さん:

そうですね。公式SNSはスタッフが登場することは少なくて、どうしてもいきものにフォーカスが当たることが多いんですが、FANTSだと飼育員やトレーナーなど、スタッフにも目を向けていますね。人柄や人となりというのも含めて、ビーチランドの魅力として紹介できていると思います。

 

 

 

あえてルールを設けず、スタッフの自主性に任せる

森山:

先程「コメントも返していこう」というお話もありましたが、スタッフさんの投稿やコメントに何かルールはあるんですか?

 

 

平松さん:

今はスタッフに任せて自由にやってもらっているので、私が毎回チェックするということは無いですね。

 

 

森山:

情報について出して良いもの・ダメなものの線引きやチョイスもお任せなんですね。

 

 

平松さん:

もちろん、公式リリースしてから出した方がいいようなオフィシャルな情報は順序を間違えないようには気をつけてます。

 

ただ、公式リリースまではいかないよねというちょっとしたお知らせとか、ビーチランドの動きが分かるような情報とかは、会員さんだけにぜひ見せようということで、自由に出していくようにしています。

 

開設してから新しくプロジェクトメンバーに入った人もいますが、最初は他のスタッフの投稿内容を見ながら徐々に始めていくという感じです。今のところ、いい感じでできているんじゃないかと思いますね。

 

 

 

オンラインからオフラインへの流れを作る

森山:

開始から半年が経ったタイミングで、「ビーサポ感謝祭」も実施しましたね。支援してくださっている会員の方に感謝を伝えようというリアルイベントでしたが、やってみて率直にどうでしたか?

 

 

平松さん:

初めてで色々と手探りで実施しましたが、当日会員さんと直接 ”ふれあい” ができたのはやっぱり良かったです。「楽しかった」という感想をいただけたのも本当に嬉しかったですね。

 

オンラインからオフラインへの流れは作っていきたいなと思っていたので、内容は変わるかもしれませんが今後もやっていきたいなと思っています。

 

 

森山:

オンラインからオフラインへの流れといえば、『ビーサポ』が始まってからの来場者数など、具体的に良い傾向はあったりしますか?

 

 

平松さん:

状況としてまだコロナもあって、現状来場者数が増えているかというと、残念ながらそうではないですね。

 

ただ、今までビーチランドに来たことのなかった方が会員になって実際に来てくださったり、感染対策をしながら遠方の方が来てくださるようになりました。

 

あとは、しばらく行ってなかったけどビーサポを機に応援しよう、と会員になってくださって、そのあと久しぶりに来てくださるという方もいらっしゃいますね。

 

しばらくは我慢ですけど、もう少しオンラインからオフラインへの流れが作れるといいなと思っています。

 

 

森山:

来場者数に限らず、他の面でオンラインからオフラインへのいい流れはあったりしますか?

 

 

平松さん:

コミュニケーションの面ですね。会員さんと『ビーサポ』でやり取りをさせてもらって、その後実際に来てくださった時に気軽なコミュニケーションが取れているというか。

 

スタッフから「来てくださったんですね!ありがとうございます」みたいな形で会話をしていたり、その場で質問・回答のやり取りもできていたりするので、良い形のコミュニケーションが生まれているんじゃないかなと思います。

 

 

 

会員のクチコミで、支援の輪が広がっていく

平松さん:

始まる前はどのくらいまで支援が増えるか確信が持てなかったんですよね。始まった当初は一気に200名の方が登録してくださったものの、そこから伸び悩んだり・・・。

 

 

森山:

それが今では、500名を超える方が支援してくださっていますよね。平松さんとして、何が要因だと分析していますか?

 

 

平松さん:

波が来ているというか、会員さんが一気に増えるタイミングが何度かあったなと感じてます。

 

理由はマスメディアへの露出もありますし、『ビーサポ』の会員さんがSNSで一生懸命、情報発信のお手伝いをしてくれてるのも大きいのかなと。「そういうプロジェクトがあるのを初めて知りました」と会員になってくださる方もいたりします。

 

 

森山:

新聞やニュースで『ビーサポ』の存在を知って、SNSで実際の声を見てから入ってくださるというのは多そうですよね。

 

 

平松さん:

情報発信を続けてくださる方がいるからこそ、そうやって少しずつ認知が広がって、支援の輪が広がってるのかなと。

 

あとは最近、水族館が閉館するニュースがいくつか出てるんですけど、それを見て「ビーチランドは残さなきゃいけない」と支援してくださる方もいて。

 

 

森山:

水族館全体が厳しい状況だと思うんですけど、だからこそ応援してくださる方がいるのは嬉しいですよね。

 

 

平松さん:

そうですね。そういったきっかけで応援してくださる方にも、寄付としてではなく継続支援をしたいと思ってもらえるように試行錯誤の日々ですね。やっぱり ”ふれあい” を大切にしたくてオンラインサロンという形にしたので、ビーチランドのファンというだけではなくて、『ビーサポ』自体に魅力を感じてもらえるといいなと思ってます。

 

 

南知多ビーチランドと『ビーサポ』のこれから

 

平松さん:

オンラインサロンそのものとは少しズレるかもしれないんですけど、普通、日常の業務ってそれぞれ担当範囲が決まっているんですよね。だから、担当が違うとその人の仕事ぶりはなかなか分からなかったり。

 

けど、オンライン上で他のスタッフの業務や仕事ぶりが見えるようになってきたので、共通の話題ができたりとかもしてますね。会員さんに情報発信をするのが本質ではあるんですけど、これは組織にとっても利用価値があるかなと思ってます。

 

 

森山:

ビーチランドさんの中でも、エンゲージメントが高まってるんですね。やっぱりお互いのことを知るところから、一体感が生まれるんだと思います。

 

 

平松さん:

会員さんとのコミュニケーションも、少し前にコメントへのリアクション機能ができましたよね。絵文字を選んでリアクションするっていう。それで、私たちもビーサポ会員さんも、人のコメントに気軽に反応できるようになりました。

 

 

森山:

ビーチランドさんでは特にたくさんの方がリアクション機能を使ってくださっていて、本当に嬉しいです!FANTSはクラウド型のサービスなので、機能がどんどんアップデートされていくのも魅力の一つだと思っています。

 

 

平松さん:

他にも、投稿の一部をSNSで拡散する機能とか、少しずつFANTS自体も改善していただいてるので。これからもっとオンラインサロンやコミュニティに適した機能を開発していってもらえると、『ビーサポ』も盛り上がると思うので嬉しいです。よろしくお願いします。

 

 

森山:

機能開発、頑張ります! 最後に、今後『ビーサポ』内でやっていきたいことや、考えていることはありますか?

 

 

平松さん:

やっぱりオンラインからオフラインへの流れは作っていきたいので、感謝祭のようなリアルイベントはやりたいですね。中身は変わるかもしれませんが、実施はしていきたいなと思ってます。

 

ただコロナもあるので、今年や来年はオンラインで、例えば園内からの生配信とかになるかもしれませんね。

 

 

森山:

オンラインとオフラインの手段をうまく組み合わせながら、さらに支援の輪を広げていきましょう! 平松さん、本日は本当にありがとうございました。

 

 

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