《前編》 ”ふれあい日本一”を掲げる水族館が、オンラインサロンを始めた理由
南知多ビーチランドは、1980年に愛知県知多半島に誕生して以来多くのファンに愛され、2020年4月29日で開園40周年を迎えました。2003年頃からは”ふれあい日本一”を掲げて、海のいきものとの距離が近いプログラムやイベントに力を入れてきました。ところが、2020年には新型コロナウイルス流行の影響で、休業や来場者数の大幅な減少など大きな打撃を受けてしまいます。
そうした状況を打開するために、2020年10月よりFANTSを活用して『南知多ビーチランド サポートプログラム』を開始。『ビーサポ』の略称で親しまれ、現在は500名を超える方が会員として支援されています。
そんな『ビーサポ』について、南知多ビーチランド所長の平松大介さんに詳しくお話を伺いました。今回は前編として、オンラインサロン開設の背景からスタートまでの準備をご紹介します。
[ 聞き手:森山裕平(FANTS事業部長)]
オンラインサロン開設の経緯
運営コストと来場者数の減少、さらに新型コロナウイルスの流行
森山:
まずは、『ビーサポ』が始まったきっかけや背景から教えてください。
平松さん:
前提としてこの業界全体の話をすると、多くの水族館が非常に厳しい状況に置かれてます。
水族館や動物園には「種の保存」「生態教育・環境教育」「調査・研究」「レクリエーション」という4つの役割があると言われていて、いきものの暮らす環境をきちんと整えたり、毎日餌をあげたり、展示の工夫をしたり、イベントを行なったりするんですね。
ですが、施設運営には非常に多くの時間、費用、そして人材が必要になってくる。そのため少しでも多くの方に来ていただかないといけないのですが、新型コロナウイルスの感染拡大で現状多くの水族館では来場者数が減っています。また、収入源となる水族館の入場料は比較的安価であることが多いんです。
森山:
水族館の運営ってすごく費用がかかって、しかも収益化が難しいんですね。
平松さん:
そうなんです。特にビーチランドは歴史のある水族館のため、施設の修繕費も必要で厳しい状況だったんです。
森山:
新型コロナウイルスの流行も大きく影響があったんじゃないですか?
平松さん:
ビーチランドも一時は休業しなければならず、夏休みシーズンも来場見込みを大幅に下回ってしまいました。
もともと私たちは ”ふれあい日本一” や ”距離感ゼロ” をテーマに、海のいきものや飼育員のスタッフとの距離が近いことを強みにしてきたんですけど、新型コロナウイルスの流行でそういった”ふれあい”が難しくなってしまった。
仕切りのない至近距離でいきものを観察したり写真を撮ったり、ショーや触れ合いイベントでいきものを身近に感じたり、そういったビーチランドの魅力が十分に発揮できない状況で、できることをやろうと始まったのが、オンラインサロンのプロジェクト『ビーサポ』でした。
クラウドファンディングではなく、オンラインサロンを選んだ理由
森山:
当時、支援の形といえばクラウドファンディングをやっている水族館さんも結構いらっしゃいましたよね。ビーチランドさんがクラウドファンディングではなく「オンラインサロン」を選んだのは、なぜだったんですか?
平松さん:
クラウドファンディングは、それこそ同じエリアで先に取り組みを始めた水族館さんもいらっしゃって、どうしても新しさのない感じが出てしまう・・・というのはありましたね。
森山:
本当に多くの水族館や動物園がクラウドファンディングを始めましたよね。確かに同じジャンルだと、どうしても先に取り組んだ方に注目や支援も集まりやすい側面があると思います。
平松さん:
そうなんです。あと、クラウドファンディングは基本的に1回のプロジェクトで区切りがありますよね。プロジェクトが終わると、一旦は完了というか。
でもオンラインサロンなら、継続的に、応援してくださる会員さんと繋がりを持つことができる。ビーチランドが”ふれあい”を大切にしていることも考えると、スタッフと会員さんの長期的な関係を築いていける方がいいんじゃないかということで、クラウドファンディングではなくオンラインサロンを選んだんです。
水族館とオンラインサロンの相性
森山:
水族館といえば、これまでは実際に足を運ぶのが常識でした。オンラインでの価値提供は当時まだまだ新しい取り組みだったと思うのですが、不安はありませんでしたか?
平松さん:
新型コロナウイルスの流行など、実際に足を運んでいただくのが難しい状況では、なるべく園内や営業時間外の様子を伝えていかなければというのはありましたね。そうやってオンライン上でいきものやビーチランドの様子を伝えていかなければというのが大きかったです。
森山:
プロジェクトが立ち上がった当初から「水族館の裏側を見せる」「リアルを見せる」というのが1つ大きなテーマだったと思います。ビーチランドさんとってはありのままの日常が、会員の方にとっては嬉しいコンテンツになるという。
平松さん:
そのお話を聞いたときは、なるほどな、と思いましたね。
あと、水族館でオンラインサロンをやるなら「生き物を見せる」「人が伝える」という2つの軸があると思うんですけど、ビーチランドのスタッフはこの「人に伝える」というのが好きなスタッフが多いんですよ。マスメディアの取材にも抵抗感がなく、前に出るとかそういうのに意欲的なスタッフが多い。会員さんも馴染みのスタッフと話せるのは嬉しいと思いますし、そういう面でオンラインサロンは向いてたと思います。
森山:
ビーチランドさんがコンセプトに掲げる ”距離感ゼロ” や ”ふれあい日本一” をオンラインで実現できたら、すごく面白いんじゃないかと思ったんですよね。
平松さん:
逆に、展示に力を入れている水族館や都市型の水族館だと、スタッフがお客様とコミュニケーションをとる機会が少なかったりして、またビーチランドとは違ってくるのかなと。
同じ水族館がやるにしても、私たちとは違った魅力のオンラインサロンになるんじゃないかと思いますね。
FANTSを選んだ理由
必要なものが全て揃っているから実現できた、1ヶ月半のスピード開設
森山:
FANTSの第一印象や、最終的にFANTSに決めていただいた理由についてもお聞きしたいのですが、いかがでしょうか。
平松さん:
『ビーサポ』をやろうとなった時点で「少しでも早く取り組みを開始したい」というのがあったんですよね。FANTSはオンラインサロンの開設に必要なものが全て揃っていて、開設のしやすさという点でいいなと思いました。
森山:
『ビーサポ』はプロジェクトを立ち上げてからスタートするまで、だいたい1ヶ月半くらいでしたよね。
平松さん:
準備期間が1ヶ月半だったのを考えると、非常にスムーズに始められたと思います。
当初からミーティングにも出ていただいたりとか、プロデュースの仕組みがあったことも大きいと思います。
あとは、FANTSをやる前にもともと法人向けの社内SNSをやられていて、その仕組みを使ってできたのがFANTSということで、コミュニケーションだったり ”ふれあい” のための基本的な機能は整っているなと思いました。
開設コストが低く、やってみようと思えた
平松さん:
あとは、開設コストがそんなにかからない点ですね。
始めるにあたってのリスクがだいぶ下がるというか、まずはやってみればいいじゃないかと思えたのは大きかったです。
森山:
ゼロからオンラインサロンのアプリやシステムを作ろうとなると、莫大な費用がかかりますもんね。
平松さん:
そうなんですよね。FANTSならある程度作り込みもできて、開設コストもそこまでかからないということで、スピードを持ってやってみようと思えましたね。
オンラインサロン開設までの準備
プロジェクトメンバーを選んで、コンテンツ内容を話し合った
森山:
ビーチランドさんとしても初めての試みということで、試行錯誤しながら色々な準備を進めて行きましたよね。
平松さん:
森山さんと最初にお会いしたのは、スタートの2ヶ月ぐらい前でしたよね。「ビーチランドさんと、こういう形でオンラインサロンというのをやりたいです」とお話しいただいて。
次のミーティングがスタートの1ヶ月半くらい前で、そこでプロジェクトとしてやっていこうとなりました。
森山:
次は、FANTSに入ってもらう人を決めましたよね。選定にあたって重視したのは、SNSへの慣れとかそういった部分でしたか?
平松さん:
もちろん情報リテラシーも重要だったんですけど、やっぱりオンラインサロンという形では、ただ発信するだけじゃなく会員さんとの交流がメインになってくると思ったので、その部分を重視しました。
普段の仕事ぶりやお客様へのコミュニケーションの取り方がどうか、担当するいきもののことをどれだけ好きか、どれだけ一生懸命業務をしているかをよく見ましたね。あとは業務の経験も考慮して、よしこの人たちに任せてみよう、と決めました。
森山:
プロジェクトメンバーの方とは、コンテンツの内容を話し合ったりもしましたよね。
平松さん:
まず事前に集まってもらって、プロジェクトの内容だったりなぜやるのかという部分を伝えて、コンテンツの内容についても毎週打ち合わせをして決めて行きました。
開始前にFANTSでアプリを準備してもらって、テスト的に投稿の練習などができたのも良かったです。
不安もあったが、まず始めてみようと思った
森山:
開設まで準備を進める中で、不安に思っていたことはありましたか?
平松さん:
プロジェクトメンバーへの負担ですね。みんな通常業務もありながら、それに加えてFANTSへの投稿もしてもらうことになるので、それが負担にならないか?というのは最初考えていました。
ただ『ビーサポ』が始まる前もSNSの運用はやっていたので、カメラとかスマホ片手に業務という形にはなっていたんですよ。今はどこの水族館でもSNSに力を入れてやっているので、ある意味これが新しい当たり前になっていくのかなとは思っていました。
森山:
スタッフの皆さんと直接やりとりできるということで、会員の方からコメントが殺到するとかそういった心配はありましたか?
平松さん:
コメントについてはあまり心配していなかったですね。ビーチランドのスタッフは取材や接客で相手に何かを伝えたりとか、そういったことに意欲的なスタッフも多くて。まずはやってみようという感じで手探りで進めていきました。
南知多ビーチランドさんへの徹底解剖インタビュー、前編はここまでです。後編では、実際にオンラインサロンを運営する中でのコツや工夫、そして『ビーサポ』や南知多ビーチランドさんの今後について伺います!
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